ドリーム小説



――初めまして、アタシ谷山麻衣ってんだ。よろしくね!



「・・・」
法正が、ぴくりとも動かない麻衣をトランクに乗せる。


「大人しく見ていれば、悪戯が過ぎたみたいね」
「嬢ちゃん?」

ノートパソコンを引っ張り出すと、スイッチを入れる。慣れた手つきで近辺の地図を出し、くまなく視線を走らせた。
「あった」
目に留めるなりパソコンを抱えて歩き出す。
「おい!」
「麻衣の事、よろしくお願いします」



【悪霊がいっぱい!? 11】



「・・・」
『本気か、主』
『正気か、主』

古びた神社の社と対峙するの影から、少年が二人、姿を現した。

『この地も他と同様、すでに信仰もなく錆びれている。そんな状況で地霊を起こせば、主もただではすまぬぞ』
『そんなにあの少女が大事か』



胸が、ズキリと傷んだ。

――初めまして、アタシ谷山麻衣ってんだ。よろしくね!

大きくなるにつれ、人と違うのかもしれないと思うようになった。
周りに感じる違和感は、日に日に大きくなっていった。

――どしたのさん?もしかして人見知り?だったらゆっくり仲良くなろうよ!ね?


「・・・大事よ、すごく」

色のないの世界に、鮮やかな色を塗ってくれたのは麻衣だから。


「病み上がりで無理をさせて悪いけど、右近、左近、力を貸して」


右近と左近は瓜二つの面を見合わせる。そうしての傍で、社を見上げた。
『この力、主の為にあるが故』
『主が重んずるは我らの宝』
右近と左近が手を社へと向け、その衣が風に靡く。は呼吸を整えると、大きく息を吸った。

「私の力を分けるんだから、
ポルターガイストなんかの好き勝手にさせないでよね!」



意識が――遠のいていく







「おーはよーう」


「谷山さん」
「黒田さん、オハヨー」
「だいじょうぶ?ケガは?」
「たいしたことないない、心配かけてごめんね?」

あははと笑う麻衣を見て、胸を撫で下ろした黒田が居なくなると、友人が駆けて来た。

「ちょっとちょっと麻衣!きのう大変だったって?」
「なんでしってんの?」
「黒田さん、さっきから自慢気に喋りまくってるよ」

見ると、あっという間に囲まれている黒田。
(ありゃりゃ)
「けどけどー、ビックリしたよねえ。いきなし渋谷さんから電話かかってくるんだもん」
「あんだって?いつ!?」

すぐさま麻衣が振り返る。
口ぐちに頷くと、友人はきょとんと首を傾げた。
「ゆうべ、ね?なにあんた知らなかったの?」
「だって、ナルきのうから行方不明なんだよ!なんて言ってた?」
「え、えーとイロイロ。旧校舎とか、あんたのこととか」
「あ、黒田さんのこととかね」

麻衣、黒田。
居なくなったナルは一体何をしているのだろう。

「そう言えばは?」

いつもなら真っ先に見つけるはずの友人が見当たらない。
トイレかな、と呟くと、友達は首を横にふった。
「今日は朝から見ないよ」


――嬢ちゃんなら、なんか険しい表情で出てったぜ。お前の事頼むってよ


法生の言葉が胸を過ぎる。
なんとなく嫌な予感がして、眉根を寄せた麻衣の後ろから声が掛かった。

「黒田、谷山。校長室に来なさい」